執筆:磯村幸一郎
中小企業者等の借入返済猶予等を謳ったいわゆる「中小企業金融円滑化法」(以下円滑化法といいます)は平成21年12月4日に施行され、平成25年3月末の終了がほぼ確実視されています。
その間平成24年3月末現在で、中小企業者の申込みは313万件、うち実行件数は289万件、実行率[(実行)÷(実行+謝絶)×100]は97.4%でほとんどのケースが採りあげられたということになります。
同法の終了に向け出口戦略が始まっております。出口戦略とはもともと軍事用語で、経営用語にも転用され、経営からの撤退時に経済的損失を最小限にする戦略を指します。
円滑化法の出口戦略のツールとして平成24年4月に「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が公表されました。その3本柱の1つに「金融機関によるコンサルティング機能の発揮」があります。この機能の要諦は円滑化法でリスケを行った先については金融機関が「円滑化法に基づく金融監督に関する指針(略称)」と「地域密着型金融の推進に関する監督指針(改正)」に共通して述べられている3つの区分に債務者を仕分するということです。
3つの区分とは、①経営改善が必要な債務者②事業再生や業種転換が必要な債務者③事業の持続可能性が見込まれない債務者のことです。①②については経営の改善が見込まれ、貸付条件の変更が認められますが,③については債務整理を前提にしており,貸付条件変更には機械的に応じてはもらえません。
しかし仕分け自体が目的ではなく事業の持続可能性を「発見」し、全く見込みのない先以外は引き上げが可能かどうかを取引先とともに検討しあうのが地域金融機関の使命でありコンサルティング機能ということになります。