執筆:磯村幸一郎(中小企業診断士)
中小企業経営者さまの中には、ご自分のお仕事の業種がどの業種に属するか判別に苦しむ方がいらっしゃるかと思います。代表的業種である、製造業・卸売業・小売業につき定義を踏まえ整理してみたいと思います。属する業種によっては、融資、助成金等で有利・不利のちがいがでてくることもあります。
Ⅰ日本標準産業分類による区分
日本標準産業分類(総務省統計局)では製造業、卸売業、小売業について下記のように定義しています。
1.製造業とは
(1)有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新たな製品を製造しこれを卸売
りするもの。
(2)単に製品を選別するとか包装の作業は製造業とはしない。
(3)完成された部分品を組み立てるだけの作業(組立作業)を行うものも製造業に含ま
れる(例外あり)。
(4)修理を事業とする事業所は一般的には「サービス業」である。通常修理といわれる
ものであっても、船舶修理、鉄道車両等の再建造もしくは改造等のように、その必要
設備からして製造能力がなければできないようなものは製造業に含まれる。
2.卸売業とは
(1)小売業または他の卸売業に商品を販売するもの。
(2)建設業、製造業、運輸業、飲食店、宿泊業、病院、学校、官公庁等の産業用使用者に
商品を大量又は多額に製品を販売するもの。
(3)主として業務用に使用される商品(事務用機械及び家具、病院、美容院などの設備、
産業用機械、建設材料など)を販売するもの。
(4)自ら製造は行わないで、自己の所有に属する原材料を下請けなどに支給し製品をつく
らせ、これを自己の名称で卸売りする製造問屋。
(5)他の事業所のために商品の売買の代理行為を行い、または仲立人としての商品の売買
のあっせんをするもの。
3.小売業とは
(1)個人用又は家庭用消費のために商品を販売するもの。
(2)産業使用者に少量または少額に商品を販売するもの。
(3)製造した商品をその場所で個人または家庭用消費者に販売するいわゆる製造小売業
(菓子屋、パン屋など)。
*商品を小売りし、かつ同種類の修理を行うものは、小売業に含まれる。
Ⅱ製造業と卸売業・小売業の関係
1.製造業は一般的には工場を所有し自社で製造を行っておりますが、最近は工場を持たないファブレス企業(製品の企画・設計のみを自社で行い、生産は外部に委託しているメーカー)も増えてきております。この業態の分類はあいまいで、日本標準産業分類ではⅠ.2.(4)で説明したとおり、いわゆる製造問屋の場合は卸売業としております。
一方日銀の金融統計調査表では、ファブレス企業は、卸売を主にするものは卸売業、企画・設計を主にしているものは学術研究、専門・技術サービス業に分類しています。
2.小売業は店舗を持つケースが多いのですが、最近はネット販売等もあり、店舗のない小売業も見られます。
製造業との区別で紛らわしいのはいわゆる製造小売業です。日本標準産業分類ではⅠ.3.(3)で見たとおりこれは小売業に分類されます。
上述の日銀調査表では、建具屋、豆腐屋、畳屋を例に挙げ、店舗を構えている場合は小売業、無店舗の場合製造業に分類しています。
3.その他製造業と紛らわしい業種
卸・小売以外にも情報通信業、建設業、農林・漁業の中には製造業に分類されるケースがあります。
Ⅲ.中小企業経営者さまへ
1.保証協会付借入のため、「業種がどこに分類されているか」を知りたい場合、「日本標準産業分類」で調べるか、役所の担当課窓口、地方経済産業局、信用保証協会等にお問い合わせください。
2.業種によって、制度融資の借入れ条件(資本金、従業員数)が変わってくるため、自社の業種・業態、取扱品目等を整理しておく必要があります。
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